日本KFCホールディングスは、2024年9月18日をもって上場廃止となりました。TOBの成立と業績悪化が主な理由です。
これは2023年10月25日から、オリジナルチキンの価格は290円から310円に引き上げられ、他のメニューも同様に値上げたことが発端です。
値上げしたら消費者が嫌がって、値下げキャンペーンに依存していたら業績が悪化したのです。
マクドナルドなどの競合他社が値上げを行っても集客力を維持しているのに対し、ケンタッキーはその耐性が弱かったことが言えます。
ケンタッキー上場廃止の理由と背景
日本KFCホールディングスが上場廃止を決定した背景には、アメリカの投資ファンド「カーライル・グループ」による株式公開買付け(TOB)が大きく影響しています。
アメリカの「カーライル・グループ」は、世界的な投資会社で、企業にお金を投資して成長を助けることを専門としています。1987年に設立され、現在は多くの国で活動しています。カーライルは、企業の株を買ったり、経営を手伝ったりして、利益を上げることを目指しています。
このTOBは、同社の株式の約51%を取得するもので、これにより日本KFCは完全子会社化される見通しです。上場廃止は2024年9月18日を予定しており、これに伴い株主優待制度も廃止されることが発表されています。
TOB(株式公開買付け)とは、企業が他の企業の株を買うための方法の一つです。英語では「Take Over Bid」と言い、企業が株主に対して一定の価格で株を売ってほしいとお願いすることを指します。TOBには、友好的なものと敵対的なものがあります。友好的なTOBは、対象企業の経営陣が賛成している場合で、敵対的なTOBは、経営陣が反対しているのに強引に行われるものです。
上場廃止の理由
①TOBの成立
日本KFCは、カーライル・グループによるTOBが成立することを条件に、株主優待制度を廃止することを決定しました。TOB価格は1株あたり6500円で、これにより株主は株式を売却することが可能になります。
②業績の悪化
2024年4〜6月期の連結決算では、純利益が前年同期比で33%減少し、売上高も2%減少しました。これは、全体の約9割の商品が値上げされた影響で客数が減少したためとされています。特に、値上げ後の顧客離れが顕著で、業績の急激な悪化が上場廃止の一因と考えられます。
③市場環境の変化
外食業界全体での競争が激化しており、特にマクドナルドなどの競合他社が値上げを行っても集客力を維持しているのに対し、ケンタッキーはその耐性が弱いことが明らかになっています。
業績悪化につながった販売戦略
値上げしたら消費者が嫌がって、値下げキャンペーンに依存していたらこうなった。マクドナルドなどの競合他社が値上げを行っても集客力を維持しているのに対し、ケンタッキーはその耐性が弱かった。
1. 値上げと値下げの迷走
日本KFCは、2023年10月に主力商品の値上げを行いましたが、その後も頻繁に値下げキャンペーンを実施しています。この戦略が消費者に混乱を招き、結果として利益が減少する要因となっています。具体的には、営業利益が前年同期比で73%減少し、純利益も33%減少しました。
2. 高価格設定の影響
KFCは、他のファストフードチェーンと比較して価格が高めに設定されています。価格改定は2023年10月25日から行われ、約9割のメニューが対象となっています。例えば、オリジナルチキンの価格は290円から310円に引き上げられました。この高価格が消費者の購買意欲を削ぎ、客数の減少を招いています。
3. 値下げキャンペーンに依存
頻繁に行われる値下げキャンペーンは、消費者に「レギュラーメニューが割高」と感じさせる結果を生んでいます。これにより、消費者は値下げ商品に依存するようになり、通常メニューの購入を控える傾向が見られます。この「値下げキャンペーン依存」は、業績の悪化をさらに悪化させる要因となっています。
4. 競争の激化
外食市場全体での競争が激化しており、特にマクドナルドやコンビニエンスストアとの競争が影響しています。これにより、KFCは価格競争に巻き込まれ、利益率が圧迫されています。
商品名 | 企業名 | 価格 |
---|---|---|
オリジナルチキン | KFC | 290円→310円 |
ファミチキ | ファミリーマート | 230円 |
揚げ鶏 | セブンイレブン | 240円 |
からあげくん | ローソン | 248円 |
200円台だったものが300円台になったことで、割高感が出てしまったのでしょう。300円の衝撃は大きかったと言わざるを得ません。
上場廃止の発表はいつ?
日本KFCホールディングスは、2024年9月17日に上場廃止を正式に発表しました。
この発表は、2024年8月29日に開催された臨時株主総会での株主の承認を受けた後に行われ、上場廃止は2024年9月18日に実施されました。
- 株式の売買ができなくなる:上場廃止になると、KFCの株を証券取引所で売ったり買ったりすることができなくなります。株式市場で自由に売買できなくなるため、急に資金が必要になったときに困ることがあります。
- 株式を売却するのが面倒:上場廃止後も株主としての権利は残りますが、株式を売却するためには、発行会社や信託銀行に問い合わせる必要があります。
- イメージが良くない:上場している企業は、一般的に信頼されやすいですが、非上場になるとその信頼が薄れることもあります。
消費者にとっては品質と商品価格が重要なので、株主でない限りあまり関係ないかもしれません。
なぜ上場廃止が決定されたのか?
上場廃止の決定は、主に株式併合と公開買付け(TOB)に関連しています。
業績の悪化や競争激化、消費者の健康志向の高まり、原材料の価格上昇が経営環境を厳しくしており、これが背景にあります。また、三菱商事が保有していた株式を米国の投資ファンド「カーライル・グループ」に売却したことも重要な要因で、カーライルは議決権のある株式の約51%を取得しました。
- 経営の自由度が向上する:上場企業は株主や証券取引所の規制に従う必要がありますが、上場廃止によりこれらの制約から解放されます。これにより、経営者は長期的な戦略を立てやすくなり、迅速な意思決定が可能になります。
- コスト削減:上場企業は、財務報告や監査、株主への情報開示などにかかるコストが発生します。上場廃止により、これらの運営コストを削減できるため、経済的な利益を得ることができます。
- 外部からの圧力の軽減:上場していると、株主の意見や市場の反応に敏感になりますが、上場廃止後はこれらの圧力が減少します。これにより、経営者は自社のビジョンに基づいた経営を行いやすくなります。
うるさい株主から距離を置いて、経営を立て直す計画をじっくり練る戦略にでたのでしょう。
日本KFCホールディングスの今後の方針
今後、日本KFCホールディングスは非公開企業として新たな経営戦略を展開する予定です。
カーライルグループとの協力を通じて、店舗の出店戦略の見直しやメニューの多様化、サステナビリティへの取り組みを強化し、持続的な成長を目指します。また、地域社会との絆を深めるための活動も強化する方針です。
- 株式上場廃止し、株主から距離を置いてじっくり立て直す
- 株主優待は廃止し、コスト削減
- 新たなフランチャイズ契約によるリスク分散
- 店舗のデジタル化や新商品開発に注力する
KFC買収の経緯と関係者の動き
KFCの買収は、2024年5月21日から始まった公開買付けによって進められました。
株式会社クリスピーが日本KFCホールディングスの全ての株式を取得することを目指し、公開買付けが成立した結果、クリスピーは51.21%の株式を取得しました。この過程では、三菱商事も重要な役割を果たしました。KFCの歴史的な買収プロセスには、創業者ハーランド・サンダース(愛称:カーネル・サンダース)から始まり、様々な企業と投資家による複雑な動きがありました。
クリスピーは、投資ファンドであるカーライル・グループのジューシーの完全子会社。日本KFCホールディングスの公開買付けを実施するために、設立された。
ケンタッキー上場廃止後の影響
日本KFCホールディングスの上場廃止に関する影響について、以下の観点から詳しく解説します。
株主優待はどうなるのか?
日本KFCホールディングスは、2024年5月20日に株主優待制度を廃止することを発表しました。
これまで、株主にはケンタッキーフライドチキンで利用できる自社商品券が年2回贈呈されていましたが、2024年3月分を最後にこの制度は終了します。
この決定は、アメリカの投資ファンド「カーライル・グループ」による公開買付け(TOB)の影響によるもので、TOB価格は1株あたり6500円に設定されています。上場廃止が見込まれる中で、株主優待の廃止は多くの個人投資家にとって残念なニュースとなるでしょう。
これまでのKFCの株主優待権利
ケンタッキーフライドチキン(KFC)の株主優待には、以下のような具体的な権利がありました。
商品券の提供
KFCの株主優待では、保有株式数に応じて、国内のKFC店舗で利用できる商品券が提供されていました。通常、年に2回(3月末と9月末)に、500円相当の食事券が配布されていました。特に、創業50周年を記念して、2021年には通常の倍の食事券がもらえる特別な優待も実施されました。
継続保有による優待の増加
株主が一定期間(通常3年以上)株式を保有することで、優待内容が増加する仕組みもありました。例えば、3年以上保有している株主には、通常よりも多くの食事券が提供されることがありました。
優待利回りの向上
株主優待は、株主にとってのインカムゲインの一部として機能していました。優待利回りは、株主が受け取る優待の価値を株価で割ったもので、これにより株主は投資の魅力を感じることができました。
- 100株保有: 年間で1,000円相当の食事券
- 300株保有: 年間で3,000円相当の食事券
- 500株保有: 年間で5,000円相当の食事券
過去10年の株価推移から見る業績変化
過去10年間の日本KFCホールディングスの株価は、様々な要因によって変動してきました。
特に、2024年5月20日の発表前後では、株価が急上昇し、一時的に5400円から6400円へと18.52%の上昇を見せました。このような急激な変動は、TOBの発表や市場の期待感によるものです。
過去10年間では、業績も安定しており、2024年3月期には売上高が1106億8500万円(前期比10.8%増)、営業利益が58億6200万円(前期比61.9%増)と好調でした。
業績の推移
会社の将来と役員の方針について
カーライルグループによるTOB後、日本KFCホールディングスは完全子会社化される見込みであり、経営方針も大きく変わる可能性があります。
役員は新たな経営資源を投入し、中長期的な成長戦略を推進する意向を示しています。特に、新規出店やメニュー多様化、デジタル戦略の強化が計画されており、これにより企業価値向上を目指す方針です。
日本KFCホールディングスの将来に関する正式な発表は、最近の報道やプレスリリースでいくつかの重要なポイントが示されています。
- 経営戦略の見直し:
日本KFCホールディングスは特に、店舗のデジタル化や新商品開発に注力することが期待されています。 - 役員人事の変更:
2024年11月1日付で新社長に遠藤久氏が就任することが発表されました。 - 持続可能な成長の追求:
KFCは、地域社会とのつながりを重視し、持続可能なビジネスモデルの構築を目指しています。これには、地域密着型の店舗展開や、環境への配慮を含むサステナビリティの取り組みが含まれます。
まとめ:上場廃止の影響と今後の見通し
上場廃止は、日本KFCホールディングスにとって大きな転換点となります。
株主優待制度の廃止や上場廃止によって、個人投資家からの支持が失われる可能性があります。
しかし、一方で新たな経営体制や戦略的投資によって、企業価値向上が期待されます。今後は、公開買付け後の経営方針や新たなMFA契約に基づく事業展開が注目されるでしょう。
短期的には不安定さが増すかもしれませんが、中長期的には成長機会もあると考えられます。
新たなマスターフランチャイズ契約を結ぶことで、店舗運営に関する責任は加盟店側に移転されます。これにより、本部は全体のブランド戦略やマーケティングに集中でき、個々の店舗の運営リスクを軽減できます。
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