HSPが生きづらい理由〜6つの人生脚本にある心のクセ〜

HSP

自分はHSP(ハイリーセンシティブパーソン)ではないか、生きづらいと感じている人向けの記事です。

自己肯定感が得られない、劣等感がある、生きづらいと感じているなら人生脚本に踊らされているだけかもしれません。

この記事では、HSPの生きづらさの原因は何なのか。交流分析と呼ばれる心理理論で、人生脚本とHSPの関係をひもときます。

さっそく見ていきます。

Ⅰ.「人生脚本」とは“心の設計図”

6つの人生脚本

人生脚本」とは、エリック・バーンが提唱した心理理論で、幼少期に自分の人生について無意識の人生計画を描くという概念です。

引用元:x.com

人生脚本は、主に7歳ころまでに形成されるといわれています。

家庭環境や親からのメッセージなどによって脚本を作り、あなたの性格を決定します。

つまり、大人になっても人生脚本にしたがって行動するのです。

それでは、7歳までに形成される人生脚本とは何なのか見ていきます。

幼少期に身につけた「こうあるべき」

エリックバーンの人生脚本とは、交流分析とよばれる心理分析法の概念です。

幼少期に身につけた「こうあるべき」という思い込みが、親からのメッセージなどによって脚本に書き込まれるイメージです。

例えば、小さい頃に「目立つといじめられる」と思った場合、「自分を出すな」という脚本ができあがることがあります。

この「〇〇するな」という禁止ルールは、禁止令とよばれます。

HSPは、「見えるな(目立ってはいけない)」という心境になったことはないですか。

目立たないように、写真を撮るときは真ん中をさける。電車にのるときは、端っこに座るなど。

「本心をさらけだすことは、目立つからやめておこう」と地味で人を避けるような性格になります。

その他の禁止令には、どんな種類があるのでしょうか。

24個の禁止令

引用元:ボブ・ゴールディングとメアリー・ゴールディング

禁止令」は、エリック・バーンの交流分析を元に、ボブ・ゴールディング(Bob Goulding)とメアリー・ゴールディング(Mary Goulding)が発展させた概念です(↑二人は夫婦)

再決断療法とばれる、「今、ここ」を”よりよく”生きることを目指した心理療法です。

禁止令の詳細は、以下の記事にまとめています。※禁止令は25個あるといわれている

HSPに関係のある禁止令にはどのようなものがあるでしょうか。

HSPに関連する禁止令何を禁じている?
①「重要であるな」自分が価値ある存在として扱われたり、相手から重要視されることを避ける
②「親しくなるな 、近づくな」他者との親密な関係や感情的なつながりを築くことを避ける
③「属するな」集団やコミュニティへの参加を避ける
④「目立ってはいけない、見えるな」他者の注目を集めたり、自己を表現したりすることを避ける
⑤「何もするな、実行するな」自発的な行動や新しいことへの挑戦を避ける
⑥「成功してはいけない、成し遂げるな」目標の達成や成功体験を得ることを避ける
⑦「考えるな」自分で物事を考えたり、判断したりすることを避ける

それぞれ見ていきます。

①「重要であるな」

「重要であるな」は、自分が価値ある存在として扱われたり、相手から重要視されることを避ける傾向があります。

日常生活では、どんなことがあるでしょうか。

日常生活の例

職場の会議で発言を控える・・・「大した内容じゃない」と自分の意見をとり下げてしまい、発言できない​

上司からの称賛を否定する・・・「そんなに褒められるほど頑張っていない」と思い、謙遜しすぎて逆に相手が興ざめする

リーダーシップをとることを避ける・・・幹事役を頼まれても「自分には向いていない」「迷惑かけたくない」と断ってしまうことがある

つづいて、2個目です。

②親しくなるな 、近づくな

「親しくなるな 、近づくな」は、今忙しいから後にしてと親から言われたり、ふれあいの機会が少なかった場合に形成されることがあります。

日常生活では、どんなことがあるでしょうか。

日常生活の例

新しい人間関係を避ける・・・職場や学校などで新しい人と関わることを避け、必要最低限の会話しかしない。

助けを求めない・・・困難な状況でも他人に助けを求めず、一人で抱え込む傾向がある。

親密な関係を自ら終わらせる・・・恋人や親しい友人との関係が深まると、不安を感じて自ら関係を終わらせてしまう(人間関係リセット)

つづいて、3個目です。

③属するな

「属するな」は、集団に属すると自分らしくいられない、他人と深くかかわって傷ついた場合に形成されることがあります。

日常生活では、どんなことがあるでしょうか。

日常生活の例

職場でのチーム活動を避ける・・・プロジェクトやチームミーティングに積極的に参加せず、個人作業を好む傾向がある。

地域活動やコミュニティへの参加を控える・・・地域のイベントやボランティア活動など、集団での活動に消極的である。

新しい環境への適応を拒む・・・転職や引っ越しなど、新しい集団や環境に馴染むことを避ける。

つづいて、4個目です。

④目立ってはいけない、見えるな

「目立ってはいけない、見えるな」は、目立って批判や嫉妬の対象となった、注目を浴びて恥ずかしい思いをした場合に形成されることがあります。

日常生活では、どんなことがあるでしょうか。

日常生活の例

昇進や表彰を辞退する・・・上司からの推薦や表彰の話があっても、「他の人の方がふさわしい」「自分にはまだ早い」と感じ、辞退する。

SNSやブログでの自己表現を避ける・・・自分の考えや経験を共有したいと思っても、「注目を集めたくない」「批判されたらどうしよう」と考え、投稿を控える。

ファッションや外見に無頓着でいる・・・自分を表現することを避けるため、地味な服装や目立たない外見を選ぶ。

つづいて、5個目です。

⑤何もするな、実行するな

「何もするな、実行するな」は、自発的な行動が危険と禁じられたり、親の言うこと以外するなと言われて育った場合に形成されることがあります。

日常生活では、どんなことがあるでしょうか。

日常生活の例

新しいことへの挑戦を避ける・・・新しい趣味やスキルの習得に興味があっても、「自分には無理だ」と感じ、挑戦を避ける。

意見やアイデアを発言しない・・・会議やグループディスカッションで、自分の意見やアイデアを持っていても、「間違っていたらどうしよう」と考え、発言を控える。

他人の指示に従うことを優先する・・・自分の考えや判断よりも、他人の指示や意見に従うことを優先し、自主的な行動を避ける。

つづいて、6個目です。

⑥成功してはいけない、成し遂げるな

「成功してはいけない、成し遂げるな」は、成功しても親が関心を示さなかった、親が何でも先回りして子供にさせない場合に形成されることがあります。

日常生活では、どんなことがあるでしょうか。

日常生活の例

目標を達成しても喜ばない・・・目標を達成しても、「運が良かっただけ」「自分の実力ではない」と感じ、自分を評価しない。(値引く)

成功のチャンスを逃す・・・新しいプロジェクトや挑戦の機会があっても、「自分には無理だ」「失敗したらどうしよう」と考え、成長の機会を逃す。

他人の成功を妬む・・・他人の成功を見て、自分にはできないと感じ複雑な気持ちになる

最後、7個目です。

⑦考えるな

「重要であるな」は、自分が価値ある存在として扱われたり、相手から重要視されることを避ける傾向があります。

日常生活では、どんなことがあるでしょうか。

日常生活の例

重要な決断ができない・・・転職や引っ越しなど、自分で情報を集めて判断したり「誰かが決めてくれたら安心」と自分で考えるのを避ける​

議論やディスカッションを避ける・・・職場や友人間で意見交換が始まると黙り込み、「間違ったことを言って笑われたくない」と発言を控える​

マニュアル通りだと安心する・・・職場で想定外の事態に対し「自分が目立ったことで相手の気分を害するのでは」と感じ、自ら動くことに不安を覚える

といった具合です。

いかがでしょうか?ひとつは該当するものがあったはずです。

禁止令と呼ばれる思い込みによって、HSPが無意識のうちに、どんな行動パターンになっているのか見ていきます。

人生脚本とは何なのか?

人生脚本のイメージ

人生脚本は無意識のうちに、今の行動パターンを作り続けています。

例えば、兄弟げんかで相手が手を出してきたにもかかわらず、親に「あんたが悪い!」と一方的に怒られた経験をしたとします。

本当は「なんで私だけ!?」と怒りを感じたが、①「(自分が)怒ったら(親に)怒られる」と思い、②「相手を喜ばせなければならない」という衝動にかられた。

怒ることができず、相手をよろこばせようと、③笑顔でその場を切り抜けた

一連の行動を整理すると、こうなります。

状況人生脚本
①「(自分が)怒ったら(親に)怒られる」→禁止令「怒りを感じるな」
②「怒らないようにしなくては」→拮抗禁止令「相手を喜ばせよ」
③「笑顔でその場を切り抜けた」→プログラム「問題解決のためにとった行動」
人生脚本ができあがるイメージ

①→②→③の順番で経験するたびに人生脚本が強化されていきます。

このため、自分の人生脚本を理解し、行動パターンを認識することが重要です。

認識しないと、沼にはまっていつも嫌な感情が残ります。

さきほどの説明で「禁止令」「拮抗禁止令」「プログラム」という言葉がでてきました。

順番に説明していきます。

まずは、人生脚本を構成する要素①禁止令からです。

①禁止令

禁止令は、「〇〇してはいけない」という禁止ルールです。

さきほどの兄弟げんかの例でいうと、怒りを感じたが、①「(自分が)怒ったら(親に)怒られる」と思いました。

怒ることを封印しましたね。つまり「怒ってはいけない」と自分に禁止ルールを設けました。

(自分が)怒ったら(親に)怒られる → ①禁止令「怒ってはいけない

これが禁止令です。本当は禁止する必要はありません。思い込みです。

つづいて、人生脚本を構成する要素②拮抗禁止令です。

②拮抗禁止令

拮抗禁止令は、「〇〇しなければならない」という衝動のことです。

さきほどの兄弟げんかの例で、
①「(自分が)怒ったら(親に)怒られる」と思ったあと
②「相手を喜ばせなければならない」という衝動にかられた
と書きました。

①禁止令「怒ってはいけない」 → ②拮抗禁止令「相手を喜ばせよ

という流れです。

いま「怒り」の感情にふれることが禁じられています。←①禁止令「怒ってはいけない」

禁止令は絶対です。でも「今ここ」にある問題を解決しなくてはなりません。

それなら、「相手を喜ばせて」問題を解決しよう。と禁止令に対抗したのです。

これが②拮抗禁止令です。※相反するものがぶつかり合って折り合いをつけるイメージ

つづいて、人生脚本を構成する要素③プログラムです。

③プログラム

①禁止令と②拮抗禁止令が対抗した結果、「今ここ」にある問題を解決する行動のことです。

さきほどの兄弟げんかの例で、
②「相手を喜ばせなければならない」という衝動にかられ
③「笑顔でその場を切り抜けた
と書きました。

②拮抗禁止令「相手を喜ばせよ」 → ③プログラム「笑顔でその場を切り抜けた

という流れです。

①「怒ってはいけない」それなら②「相手を喜ばせて」対抗しよう。一番いい解決方法は?

③「笑顔でその場を切り抜けよう」となったわけです。

これが③プログラムです。

以下は、まさに①禁止令、②拮抗禁止令、③プログラムが発動した瞬間の動画です。

流れ方が①→②→③と、あらかじめ脚本があるかのようなパターン行動です。

まるでプログラムされているようですね。

このように、誰しも人生脚本に沿って一連の行動パターンをプログラムされているのです。

つづいて、HSPの人がもちやすい人生脚本について見ていきます。

HSPの人が持ちやすい人生脚本とは?

HSPの人が持ちやすい人生脚本とは、「私はOKでない、あなたはOK」の構えになりやすいです。

交流分析では、ライフポジション「自分と他人に対する基本的な価値判断」と呼ばれています。

「私はOKでない、あなたはOK」を言い換えると、「私は正しくない、あなたは正しい」という態度です。

これが、HSPの自己評価が低い・劣等感があると訴えている人が多い原因と考えています。

さきほど、②拮抗禁止令にふれました。

既に②の拮抗禁止令の状態のとき、「あなたはOK(正しい)」という構えになっているでしょう。

他にライフポジションは、どんなものがあるかまとめました。(↓太字はHSP)

わたしあなた構え(人生態度)
OKOK理想的な構え
OKNG相手を見下す
NGOK劣等感・依存的
NGNG絶望・無力感
ライフポジションのパターン

※スペースの都合上「OKでない」「NG」と表記しています

これらのパターンも、もちろん人生脚本の行動パターンに刻まれています。

つまり、HSPは「劣等感・依存的」傾向、非HSPは「相手を見下す」構えになりやすいです。

注意したいのが、常に「わたしはNG、あなたはOK」ではないです。

ストレスを強くうけたときに、「わたしはNG、あなたはOK」の傾向があるという意味です。

この仕組みは、HSPがもっとも生きづらいと感じる理由のひとつでしょう。

詳しくは、HSPのトリセツで解説しています。

ところで、HSP(ハイリーセンシティブパーソン)は感受性が豊かで敏感な気質を持つ人です。

HSPは幼少期からはじまり、深く影響を受けやすいといわれていますよね。

そのため、HSPの人が持ちやすい人生脚本は、「相手を機嫌を伺い自分の感情を後回し」や「相手に本心を打ち明けられない」ことが挙げられます。

HSPに関する代表的な禁止令、拮抗禁止令、プログラムの例を挙げます。

①禁止令(一部)②拮抗禁止令③プログラムの例
「怒ってはいけない」「相手を喜ばせよ」笑顔でその場を乗り切る
「成功してはいけない」「(自分が)強くあれ」自分の本心をさらけ出せない
HSPの人生脚本の行動パターン

例えば、「他人を喜ばせるために自分を犠牲にする」といった脚本が形成されることがあります。

これはまさに、怒りたいのを我慢して相手を喜ばせる、自分の感情を犠牲にする行動パターンに当てはまります。

他にHSPが、陥りやすい人生脚本の例はあるのでしょうか?

Ⅱ.HSPが陥りやすい人生脚本の例

HSPが陥りやすい人生脚本とは、2つの脚本の多用です。

多用する人生脚本とは、知マイナス情マイナスのことを指します。

本来、6つある脚本をバランスよく使うことが「今、ここ」をよりよく生きるために必要です。

人生脚本には、精神的に健康でいるための条件があります。

精神的に健康でいるための条件を、心の栄養(素)と呼んでいます。

6つの人生脚本の詳細は、HSPのトリセツで解説しています。

以下に、6つの人生脚本の心の栄養(素)をまとめます。

6つの人生脚本心の栄養(素)
知プラス・仕事で承認されること
・ものごとが計画どおり進む
知マイナス(HSP)・一人になれる空間で過ごす
情プラス・刺激的なできごとを求める
情マイナス(HSP)・感覚的に心地よいこと
・人間関係が良好であること
意プラス・仕事で承認されること
・自分の信念が正しいと確信する
意マイナス(HSS型)遊び心ある物に触れること
各人生脚本の心の栄養(素)

反対に、人生脚本の心の栄養が不足した場合、つぎの行動パターンに陥ります。

6つの人生脚本栄養不足になると
知プラス・人の仕事まで自分がする
・効率の悪さに苛立つ
・予定が狂うことに苛立つ
・時間や金銭に細かくなる
知マイナス(HSP)・誰とも会いたくなくなる
・自分の殻に閉じこもる
情プラス・ルールを守らなくなる
・口論を仕組む
・相手の不備につけこむ
情マイナス(HSP)・優柔不断になる
・相手に合わせすぎる
・ミスが多くなる
意プラス・相手の悪い部分ばかり指摘する
・自分の意見を押し付ける
・価値観の異なる人を敵視する
意マイナス(HSS型)・不平不満が多くなる
・相手のせいにする
・逆恨みや復讐心をもつ
人生脚本の行動パターン(心の栄養不足)

HSPが陥りやすい人生脚本といいましたが、実は6つの脚本はすべての人が持っています

HSPはHSPの脚本を多用し、非HSPは非HSPの脚本を多用していると言えます。

HSPの人生脚本にかたよっているからと言って、すべて悪いわけではありません。

問題は、HSPに対応した「心の栄養」が不足することで「自分はOKでない(正しくない)」状態になることです。

あなたがストレスをうまく解消できていれば何も問題ありません。(心の栄養素が足りている状態)

ところが、ストレスの解消がうまくいかなくなると、次の失敗パターンに陥ります。(心の栄養不足)

HSPが陥りやすい人生脚本のパターン
  • 相手の怒りに敏感になる
  • 優柔不断になる
  • 本音が言えず自分だけ損する
  • 消極的になる
  • 自分の殻に引きこもる

それぞれ見ていきます。

失敗パターン、一つ目です。

①相手の怒りに敏感になる

HSPが怒られることに敏感なのは、①禁止令「怒ってはいけない」の禁止ルールがあるためです。(↓赤字部分)

HSPの人生脚本①禁止令(一部)②拮抗禁止令
知マイナス(HSP)「成功してはいけない」「(自分が)強くあれ」
情マイナス(HSP)「怒ってはいけない」「相手を喜ばせよ」
HSPの人生脚本の行動パターン

①禁止令「怒ってはいけない」は「怒りを感じるな」とも解釈できます。

つまり、怒りの感情に触れてはいけないのです。

常日頃、相手の怒りに触れないようアンテナを張るのは、禁止令「怒りを感じるな」が原因です。

失敗パターン、二つ目です。

②優柔不断になる

HSPが優柔不断になるのは、②拮抗禁止令「相手を喜ばせよ」のルールがあるためです。(↓赤字部分)

HSPの人生脚本①禁止令(一部)②拮抗禁止令
知マイナス(HSP)「成功してはいけない」「(自分が)強くあれ」
情マイナス(HSP)「怒ってはいけない」「相手を喜ばせよ」
HSPの人生脚本の行動パターン

②拮抗禁止令「相手を喜ばせよ」は「自分の感情(怒り)は二の次」とも解釈できます。

つまり、自分のことを優先できなくなってしまうのです。

優柔不断になるのは、拮抗禁止令「相手を喜ばせよ」が原因です。

失敗パターン、三つ目です。

③本音が言えず自分だけ損する

HSPを自認していて、職場や学校で「誰か代わってくれない?」と頼まれ、本当は都合が悪いのに引き受けてしまった経験はないでしょうか。

本音が言えず自分だけ損するのは、②拮抗禁止令「相手を喜ばせよ」、「(自分が)強くあれ」のルールがあるためです。(↓赤字部分)

HSPの人生脚本①禁止令(一部)②拮抗禁止令
知マイナス(HSP)「成功してはいけない」「(自分が)強くあれ」
情マイナス(HSP)「怒ってはいけない」「相手を喜ばせよ」
HSPの人生脚本の行動パターン

②拮抗禁止令「(自分が)強くあれ」は、「自分がしっかりしなくては」と言いかえられます。

と同時に自分の本心を隠そうとします。自分の本心を出すと目立って、相手の気分を害することを恐れているからです。

つまり、本音を言えず、喜ばせようと相手を優先してしまうのです。

これって自分だけ損していますよね。拮抗禁止令「相手を喜ばせよ」、「(自分が)強くあれ」が原因です。

失敗パターン、四つ目です。

④消極的になる

HSPが消極的になるのは、①禁止令「成功してはいけない」の禁止ルールがあるためです。(↓赤字部分)

HSPの人生脚本①禁止令(一部)②拮抗禁止令
知マイナス(HSP)「成功してはいけない」「(自分が)強くあれ」
情マイナス(HSP)「怒ってはいけない」「相手を喜ばせよ」
HSPの人生脚本の行動パターン

②禁止令「成功してはいけない」は「成功すると目立ってしまう」とも解釈できます。

HSPがもつ人生脚本、知マイナスにはもっとも生きづらい禁止令が存在するのです。

周囲に人がいると、成功は目立つことにつながるので行動にブレーキがかかりやすくなります。

反対に一人のときは、目立つ必要もないので禁止令「成功してはいけない」から解放されます。

消極的になるのは、禁止令「成功してはいけない」が原因です。

失敗パターン、五つ目です。

⑤自分の殻に閉じこもる

人生脚本、知マイナスには禁止令「成功してはいけない」があると書きました。

日常生活で「成功しない」で過ごすことは可能でしょうか。できませんよね。

だから仕方なく、禁止令に対抗して「(自分が)強くなる」ことで禁止令に対抗するのでした。

HSPの人生脚本①禁止令(一部)②拮抗禁止令
知マイナス(HSP)「成功してはいけない」「(自分が)強くあれ」
情マイナス(HSP)「怒ってはいけない」「相手を喜ばせよ」
HSPの人生脚本の行動パターン

拮抗禁止令「(自分が)強くあれ」は緊張状態を伴います。(たいていは誰かがそばにいる)

この状態がつづくということは、自分が目立つ(と感じている)状態にあるということです。

心の栄養が不足すると、一人の時間を過ごそう(栄養をとろう)と働きます。

さらに心の栄養が阻害されつづけると、強制的に自分の殻に閉じこもろうとリセット機能が働きます。

いかがでしたでしょうか。

失敗パターンをたどっていくと、HSPの人生脚本を形成する①禁止令が根本にあることがわかります。

失敗パターンに陥らないようにするには、失敗パターンに入る自分を知り、自分を許すことです。

怒りを我慢したら、モヤモヤします。あまりにも理不尽なら、「怒り」を感じていいはずです。

とはいえ、「怒り」で応酬するのは、後味が悪くてできない人もいるでしょう。

その場合、『今、ここ』で①禁止令が作用していると認識して自分を許すだけでOKです。

ここで、HSPの特徴について振り返ってみます。

Ⅲ.HSPの特徴と交流分析をくらべてみる

HSP(Highly Sensitive Person)は、エレイン・アーロン博士によって1990年代に提唱された「刺激に敏感な気質」を指します。

エリック・バーンが提唱した「人生脚本」とは異なる概念かもしれません。

しかし、本質的には同じだと考えています。

HSPは、環境や他者に対して非常に敏感で、感受性が高い特徴を持つ人々です。

そこで交流分析の視点と、エレイン・アーロン博士の提唱した刺激に敏感な気質を比べてみます。

HSPは「刺激に敏感な気質」をもつ人のこと

さきほどHSPは「刺激に敏感な気質」をもつ人と書きました。

本家本元のエレイン・アーロン博士の公式サイトによると、つぎの記述があります。

あなたは、明るい光、強い匂い、粗い生地、近くのサイレンなどに簡単に圧倒されてしまいますか?

引用元:エレイン・アーロン博士公式サイト

言いかえると、HSPは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚など、五感すべてに対して高度な感受性があるといことです。

少し前にあげた、HSPの人生脚本の心の栄養について振り返ってみます。

HSPの人生脚本心の栄養素
知マイナス(HSP)・一人になれる空間で過ごす
情マイナス(HSP)・感覚的に心地よいこと
・人間関係が良好であること
HSPの行動パターン

情マイナスの人生脚本に注目してみると、「感覚的に心地よいこと」が心の栄養になっています。

つまり、「感覚的に」は五感に対する刺激に敏感であることを意味しています。

さらに、知マイナスの人生脚本に注目してみると、「一人になれる空間」が心の栄養になっています。

つまり、近くに誰かがいたり他人の雑音にも敏感であることを意味します。

交流分析で提唱する、人生脚本の性格・特徴に一致します。

さらにHSPの特徴と、交流分析で提唱する人生脚本の特徴をくらべてみます。

HSPの特徴と交流分析の比較

ここまでで、少し複雑になってきたと思いますのでHSPの特徴と人生脚本を比較します。

左側はエレイン・アーロン博士のサイトで挙げられているHSPの性格・特徴です。

右側は交流分析で挙げられている人生脚本の性格・特徴です。

HSPの特徴交流分析の人生脚本
(1)明るい光、強い匂い、粗い生地、近くのサイレンなどに圧倒される情マイナスは髪を切ったなど些細な変化に気づく
(2)深い会話が好き知マイナスは深遠で含蓄のある言葉を好む
(3)短時間でやるべきことがあるとイライラする知マイナスは自分のペースでじっくり取り組む
(4)他の人が感じていることを理解するのが得意情マイナスは6つの脚本のうち共感性No.1
(5)物事を深く反省する傾向がある知マイナスは物事を反芻・内省する
(6)暴力的な映画やテレビ番組を避ける情マイナスは友情・愛情のテーマを好む
(7)繊細で上品な香り、味、音、芸術作品を好む情マイナスは感覚的な心地よさが心の栄養
(8)豊かで複雑な内面生活を送る知マイナスは自分に独自の世界をもつ(想像力が豊か)
(9)両親や先生から繊細・内気とみられていた知マイナスは6つの脚本で唯一の内向的な性格
エレイン・アーロン博士公式サイト

ここまでをまとめると、HSPの特徴は交流分析で提唱された、6つの人生脚本のうちの2つに対応する特徴があります。

つまりHSPの特徴は、交流分析でいう知マイナスと情マイナスの人生脚本で表現できるということです。

HSPの特徴6つのうち対応する人生脚本
(1)明るい光、強い匂い、粗い生地、近くのサイレンなどに圧倒される情マイナス
(2)深い会話が好き知マイナス
(3)短時間でやるべきことがあるとイライラする知マイナス
(4)他の人が感じていることを理解するのが得意情マイナス
(5)物事を深く反省する傾向がある知マイナス
(6)暴力的な映画やテレビ番組を避ける情マイナス
(7)繊細で上品な香り、味、音、芸術作品を好む情マイナス
(8)豊かで複雑な内面生活を送る知マイナス
(9)両親や先生から繊細・内気とみられていた知マイナス
HSPの特徴と人生脚本の対応表

知マイナスとか情マイナスが「ようわからん」という方は、こちらに有名人に例えた記事があります。

以上、交流分析の人生脚本の特徴はHSPと本質的に同じという話でした。

つづいて、HSPが生きづらさを感じやすい理由について見ていきます。

Ⅳ.なぜHSPは生きづらさを感じやすいのか?

HSP(Highly Sensitive Person)は、感受性が強く敏感な気質を持つため、日常生活で様々な生きづらさを感じることがあります。

以下に、その理由を詳しく説明します。

HSPが生きづらさを感じる理由
  • 「私はOKでない、あなたはOK」になりやすい
  • 自己肯定感を得にくい仕組み(劣等感
  • 内向性は外向性に対し少数

それは、HSPが相手の出方をうかがってから行動するためです。

例えば、HSPは相手の怒りを買っていないか、もしくは自分が目立ったことで相手の気分を害していないかクリアしたあとで行動を起こす傾向にあります。

非HSPは、この工程を踏みません。(別の理由で踏むことはある)

HSPはそのぶん余計な、心理的負荷がかかっているような状態と考えられます。

そもそも知マイナスの心の栄養は「一人になれる空間で過ごす」でした。

会社に行けば、人が近くにいることも多いです。これだけで、HSPにはストレスかかり不利です。

それでは、生きづらさを感じやすい理由の一つ目を見ていきます。

①「私はOKでない、あなたはOK」になりやすい

人生脚本とは①禁止令、②拮抗禁止令、③プログラムの流れで進む話をしました。

実は②拮抗禁止令の状態のとき、少しストレスがかかっている状態です。(ストレスLv.1)

ほとんどの場合、その状態は時間がたてば無くなります。ストレスが解消されている状態です。

しかし心の栄養不足が進むと、翌日に持ちこされたり後をひきます。(ストレスLv.2)

こうなると、HSPは自分を責めるようになります。自分は正しくないんだと。

人生脚本栄養不足が進むと(Lv.2)
知プラス「わたしはOK、あなたはOKでない」
知マイナス(HSP)わたしはOKでない、あなたはOK」
情プラス「わたしはOK、あなたはOKでない」
情マイナス(HSP)わたしはOKでない、あなたはOK」
意プラス「わたしはOK、あなたはOKでない」
意マイナス(HSS)「わたしはOK、あなたはOKでない」
心が栄養不足になった人生脚本のライフポジション

心の栄養不足が進むと、HSPは「わたしはOKでない」と自分を否定するふるまいを示します。

いいように捉えれば、HSPは「相手を攻撃しない」と解釈できます。(自分は正しくない)

反対に、非HSPは「相手を攻撃する」と解釈できます。(自分は正しい)

HSPは少数派です。世間が世知辛く感じるのは、「相手を攻撃する」人が多いからかもしれません。

つづいて、生きづらさを感じやすい理由の二つ目です。

②自己肯定感を得にくい仕組み(劣等感)

「わたしはOKでない、あなたはOK」状態は、自己肯定感を得にくいということです。(劣等感)

HSPの人生脚本ごとに、「わたしはOKでない」が例えばどのような行動をとるのかまとめます。

人生脚本わたしはOKでない、あなたはOK」の例
知マイナス(HSP)・自分の殻に引きこもる
・人との接触を断つ
・社会不適合者と思い込む
情マイナス(HSP)・相手の機嫌が気になりミス
・摂食障害(暴飲暴食)
・自傷行為(薬の大量摂取)

もしあなたがHSPだと感じていて、人生脚本を書き換えたいなら以下のリンクを紹介します。

ちなみに非HSPは、「わたしはOKでない」にならないのでしょうか。

結論からいうと、なります。しかし、HSPのように長引かないです。

そして最後、生きづらさを感じやすい理由の三つ目です。

③内向性は外向性に対し少数

HSPの特徴である、内向性は知マイナスの人生脚本を多用する人が持つ脚本です。

以下は、6つの人生脚本ごとの内向性の有無です。5対1と圧倒的に少数です。

人生脚本内向性の有無
知プラスなし
知マイナス(HSP)あり
情プラスなし
情マイナス(HSP)なし
意プラスなし
意マイナス(HSS)なし

アメリカでのデータにはありますが、それぞれの人生脚本の分布割合です。

人生脚本割合
知プラス25%
知マイナス(HSP)10%
情プラス5%
情マイナス(HSP)30%
意プラス10%
意マイナス(HSS)20%

知マイナス(内向的)な性格は、10%と少数です。反対に情マイナスは大多数です。(←女性に多い)

アメリカでも男と女の「らしさ」は、次のように言われています。

伝統的なジェンダーに基づくステレオタイプでは、野心、権力、競争心などの行為特性は男性に固有のものとされ、養育、共感、他者への配慮などの共同体特性は女性に固有のものとされている

引用元:性別化されたステレオタイプと規範:態度と行動を変容させることを目的とした介入に関する系統的レビュー

同様に親から子へ人生脚本が形成されるとすると、日本でも割合は大きく違わないと思います。

そうすると、内向的な人は1割程度しかいません。会社にいけば、ほとんどが外向的ということです。

中には、内向的な人に理解をしめす人もいるでしょうが、すべて理解されるわけではありません。

ここにもHSPの生きづらさがあるのではないでしょうか?

HSPの生きづらさをもう一度、まとめると

HSPが生きづらさを感じる理由
  • 「私はOKでない、あなたはOK」になりやすい
  • これが劣等感・自己肯定感を得にくい
  • 内向性は外向性に対し少数

になります。

それでは、HSPの生きづらさを軽減するにはどうしたらいいのでしょうか。 

Ⅴ.HSPの生きづらさを軽減するには?

生きづらさを軽減する方法は、以下の4つの徹底です。

HSPの生きづらさを軽減する方法
  • 人生脚本の心の栄養を満たす
  • 禁止令は思い込みである
  • 私はOKと自分を許す
  • 相手の地雷を踏まない

それぞれ見ていきます。

①人生脚本の心の栄養を満たす

生きづらさを軽減するにはHSPに対応した、心の栄養を満たしてください。

もう一度、HSPの心の栄養をおさらいします。

6つの人生脚本心の栄養
知プラス・仕事で承認されること
・ものごとが計画どおり進む
知マイナス(HSP)・一人になれる空間で過ごす
情プラス・刺激的なできごとを求める
情マイナス(HSP)・感覚的に心地よいこと
・人間関係が良好であること
意プラス・仕事で承認されること
・自分の信念が正しいと確信する
意マイナス(HSS型HSP)遊び心ある物に触れること
各人生脚本の心の栄養

知マイナスと情マイナスの心の栄養を満たす例をそれぞれ見ていきます。

知マイナス(HSP)の心の栄養

HSPの特徴である知マイナス(内向性)は、心の栄養が「一人になれる空間で過ごす」でした。

いわゆる「引きこもり」のイメージを持つかもしれません。

これって社会不適合者とか、自分は変な人間なのでは?と感じるかもしれません。

逆です。引きこもりは、あなたの心を落ち着かせ、ストレスを解消してくれるのです。

外向的な人は、逆です。引きこもっていたら、いつかはストレスになるでしょう。

HSPがもつ内向性は特殊で、一人になることで元気になるのです。

いや私は違う。確かに一人になる時間は必要だけど、そうじゃない。

と感じる場合、次はどうでしょう。

情マイナス(HSP)の心の栄養

HSPの特徴である情マイナスは、心の栄養が「感覚的に心地よいこと」でした。

五感にいいこと。例えば、観光、グルメ、美術館、アロマ、ASMR、マッサージを受けるなど感覚的に心地よいことを楽しんでください。

あなたを攻撃してこない人との会話もある程度リフレッシュが期待できます。(内向性が強い場合はNG)

あと、痛みを感じる情報や映像はシャットアウトします。

もうひとつ情マイナスには、心の栄養が「人間関係が良好であること」がありましたよね。

例えば、大事なひとへプレゼントを贈る、誕生日などをお祝いする。

相手をねぎらったり、自分を大事にしてくれる仲間との時間を過ごしてください。

ときどき、一人になる時間をつくることは忘れないでください。

つづいて2つ目です。

②禁止令は思い込みである

あと「禁止令」は思い込みであることです。

確かに幼少期は、親や養育者に頼らず生き延びる術がありませんでした。

大きくなったあなたは自由です、幼少期に人生脚本に刻み込んだ内容を演じる必要はありません。

特に、HSPが最も生きづらさの障壁となる「成功してはいけない、成し遂げるな」という禁止令は守らなくていいです。

逆に、守ることであなたを値引く行為につながります。成功して目立ってもいいんです。

よくHSPを自認する人で、ラーメン屋の店主が腕を組んでいる写真が苦手。という人がいます。

これは、腕を組むことで「成功感」を演出することへの禁止令「成功するな」が作用しています。

無理にとはいいません。成功感を演出しないと集客できず生き残れないこともあるということです。

つづいて3つ目です。

③私はOKと自分を許す

HSPは「私はOKでない(正しくない)」のライフポジション(構え)になると書きました。

わたしは気を抜くと、「すいません」と言ってしまい自分が正しくない態度をとることがあります。

そんな場合も、今「私はOKでない」構えになっているなと、自分を許すことにしています。

そうすることで、自分を責めるクセから脱却できると信じています。

自己評価や自己肯定感の低さは、「わたしはOKでない」という自分を値引く行動からきている

と認識するだけでも、だいぶ変わりませんか。(つまり人生脚本に踊らされているだけと認識可能)

つづいて4つ目です。

④相手の地雷を踏まない

非HSPは「わたしはOK、あなたはOKでない」構え(ライフポジション)になると書きました。

そして、「あなたはOKでない」とは「あなたは正しくない」という解釈でした。

つまり、非HSPはストレスを受けると、あなたを攻撃してくるということです。

それならば、少しでも相手の地雷を踏まないようにするしかありません。

その方法は、以下の記事に書きましたのでよかったら参考にしてください。

以上が、HSPの生きづらさを軽減する方法でした。 

まとめです。

Ⅵ.まとめ

人生脚本とは、禁止令、拮抗禁止令、プログラムから構成されている。

とくに禁止令は、幼少期に親(養育者)のメッセージから無意識に自分に設けた禁止ルール(思い込み)。守らなくていいのです。

人生脚本とは6冊あり、そのうちどれを多用するかで性格がきまる。(7歳までにほぼ決まる)

HSPの人生脚本は、知マイナス・情マイナスの人生脚本にかたよっている。(偏りは悪くはない)

HSPはストレスを強くうけ、うまく解消できないと「私はOKでない、あなたはOK」になる。(心の栄養不足)

人生脚本の失敗パターンを認識して、自分を許すと生きづらさが軽減できる。(自己理解)

HSPの生きづらさを軽減するには、以下を徹底する。
人生脚本の心の栄養を満たす
禁止令は思い込みである
私はOKと自分を許す
相手の地雷を踏まない

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