実は、HSPがもつ内向性には①『成功してはいけない』の禁止ルールがあります。
つまり、自分が目立ったことで相手の気分を害してはいけない思い込みがあるということです。
さらに、HSPがもつ感受性には②『相手を喜ばせよ』の禁止ルールもあります。
これは怒りに触れて相手の気分を害してはならない思い込みでもあります。
HSPが競争を苦手とする理由は、勝つと相手の気分を害する恐れがあるため避けようとすることが挙げられます。
①『成功してはいけない』と②『相手を喜ばせよ』の禁止ルールは幼少期にあなたがこれらの感情を味わったことがきっかけと言われています。
結論、競争が苦手だろうが何も問題ありません。
HSPは競争を避けていい
結論からいいますと、競争は苦手でいいです。
競争を避けようとするのは、心の健康を保つ安全装置が働くからです。
HSPが競争を苦手とする心理には2つの禁止令があります。
禁止令については、のちほど触れます。
それは「相手を喜ばせよ」と「成功してはいけない」です。
これがHSPの競争を苦手とする2つの理由です。
無意識にこのような心理になっていないでしょうか。
実はこれ、思い込みです。
自分が「相手を喜ばせよ」「成功してはいけない」になっていると感じたら
- 「相手を喜ばせる」前に
「自分を喜ばせる」 - 「成功してはいけない」から
「成功してもいい」
と禁止令に許可してください。できなくても許可してください。
要は、自分を責めない体勢に持っていくことが目的です。
続いて、HSPが競争を苦手とする起源について書いていきます。
HSPの競争が苦手な理由
競争が苦手な根底には何があるのでしょうか。
本記事のベースとなる考え方は交流分析です。
交流分析についてはこちらの本が参考になります。
交流分析について
交流分析について簡単に説明します。
1950年代後半に、精神科医エリック・バーンによって提唱された一つの心理学の理論です。
自分自身の人間関係や認知傾向を知り、対人関係の問題を解消したり、トラブルを回避したりするための心理療法になります。
HSPの生きづらさは、すでにエリック・バーンによって浮彫りになっていたのです。
私はここからアプローチしています。
冒頭で禁止令という言葉がでてきました。禁止令については、このあと触れます。
HSPが競争を苦手とするのは、「相手を喜ばせよ」「成功してはいけない」思い込みだと言いました。
人は誰しも幼少期に自分に課したルールを持っていて、このルールが人の気質を形成しています。
HSPもこの自分に課したルールに従って、行動しています。
自分に課したルールは、性格として表面化します。
特にHSPは自分に課したルールによって、自責の念が強いことが知られています。
詳細はこちらをご覧ください。
HSPの競争が苦手となる認知のクセ
交流分析には禁止令と拮抗禁止令という用語があります。
禁止令と拮抗禁止令について
用語 | 意味 |
①禁止令 | 「やってはいけない」ルール |
②拮抗禁止令 | 「やらなければならない」ルール |
①禁止令は「〇〇してはいけない」という禁止事項のこと。
②拮抗禁止令は「〇〇しなくてはならない」という衝動のこと。
①と②の関係は次のようになります。
①禁止令が守れない状況になったとします。
例えば、HSPには「怒ってはいけない」という禁止令があります。
日常生活で怒りを覚える場面はいくらでもありますよね。
でも「怒ってはいけない」ため怒りをあらわにすることはありません。
どうするのかというと、「相手を喜ばせよ」という衝動に駆られます。
怒りを隠して、喜ばせようとするのです。
これが②拮抗禁止令です。
まとめると
- ①禁止令→守れない→②拮抗禁止令
のプロセスを経ます。
理由①相手を喜ばせよ
「相手を喜ばせよ」は拮抗禁止令です。
拮抗禁止令とは禁止令が守れない場合、代替手段としてとる禁止令のことです。
その前に禁止令に触れておく必要があります。
その禁止令とは何か、というと「怒ってはいけない」です。
HSPは「怒ってはいけない」が守れないと発動する拮抗禁止令「相手を喜ばせよ」に支配されます。
気遣いのない言葉、態度に怒りを覚える場面は日常生活でたくさんあります。
しかし、怒りを面に出してはいけないため、モヤモヤするのはこの仕組みが原因です。
拮抗禁止令は思い込みとも言えます。
自分で自分に課したルールです。
それを解除するのも自分でできるはずです。
解除する方法は自分で自分を許可する行為です。
本当は怒ってもいいんです。
だって自分で思い込んでいるだけなのですから。
この仕組みを知らないと、許可する対象がはっきりしないためモヤモヤだけが残ります。
理由②成功してはいけない
「成功してはいけない」と聞いて、
そんなわけないだろうと疑問に思った人もいるかもしれません。
しかし「成功してはいけない」の裏側には
「目立ってはいけない」という禁止令が潜んでいます。
これは言葉の通りで、
誰かの目に触れることを禁じているということです。
目立つことは成功に繫がるので、一人で過ごすことを好みます。
自分が目立って相手の気分を害した経験をすると、
引きこもるようになるのには、ここから来ています。
「どうせ自分なんか、できるわけがない」と最初から挑戦をあきらめてしまう傾向があります。
ぜひこの仕組みを知ってください。
「成功してはいけない」という禁止令を知ることで、
自分に「成功していい」と許可する対象が言語化できるようになります。
禁止令「成功してはいけない」が恐ろしいのは、自己肯定感を阻害してしまう点です。
自分で自分の首を絞めていることが、伝わったでしょうか。
こちらもお時間があればご覧ください。
HSPの競争が苦手と感じる場面
HSPは実際にどのように競争が苦手と感じるのでしょうか。
その場面をいくつか挙げていきます。
根底の心理を抑えつつ、見ていきましょう。
- 「相手を喜ばせよ」
→怒りに触れることで、相手の気分を害したくない - 「成功してはいけない」
→自分が目立つことで、相手の気分を害したくない
好きな人が友人と同じだと譲ってしまう
HSPが思春期に経験する場面で、こんなことがあったと思います。
友人と好きな人と話をする機会があると、
好きな人が同じだったなんてことがあります。
HSPの心理である「相手を喜ばせよ」「成功してはいけない」が作用して、
相手に好きな人を譲って自分は応援する側に回る経験です。
このとき自分の気持ちを抑え込み、相手を優先してしまうのです。
自分がその競争に有利な立場であったとしても、
相手を押しのけてまで勝つことに抵抗感をもちます。
本当に手に入れたいものを、手放してしまうわけです。
勝つことにガツガツしている人に興ざめ
「成功してはいけない」は「勝つこと」に置き換えることができます。
例えば、スポーツで勝つことに鼻息荒くガツガツしている人がいると、
譲りたくなりませんでしたか。
拮抗禁止令「相手を喜ばせよ」も作用しています。
「そんなに勝ちたいなら勝たせてあげるよ。」と急に興ざめして、
戦いの場から去るのです。
この競争は大人になっても、苦手なこととして立ちはだかります。
それは日本の資本主義の競争社会と非常に相性がよくないことです。
例えば、次のような場面です。
集団面接で自分をアピールできない
集団面接も一種の競争です。
集団面接ではディスカッション形式で議論する会社もあります。
苦手と感じますよね。
自分をアピールすることで、誰かが不採用になるのが目に見えると顕著です。
私は過去に志望者と同じ待合室で結果を待ち、
不採用になったら、その部屋から退出する形式の面接に参加したことがあります。
不採用になったら、公開処刑をされている気分です。
当時は就職氷河期だったので、志望者は多くいる買い手市場でした。
私はこれが非常に苦手で、個人面接の方がまだマシだ、とも感じていました。
ライバルを打ち負かすと虚しさが残る
社会人になって営業職に就いたりすると、会社によっては社員同士をライバルになることがあります。
今もあるのかわかりませんが、毎月の営業成績を棒グラフにして表彰する場面などです。
HSPが仮にトップの成績をおさめた場合、みんなの前で表彰されることに違和感をもつのではないでしょうか。
まず「目立ってはいけない」に抵触します。
あとで誰かが悔しい思いをしていた、なんて話を聞いたものなら「相手を喜ばせよ」に抵触します。
HSPは次第に虚しさを覚え、競争することへの意欲を失うことでしょう。
根底にこのような心理があるため、競争することを苦手と感じます。
HSPじゃない人は競争苦手なの?
HSPじゃない人は、競争苦手ではないです。むしろ得意といってもいいでしょう。
なぜなら、心の栄養が競争に対してポジティブに働くからです。
心の栄養とは、人が何を生きがいにして行動しているのかを示す条件のことです。
HSPとHSPじゃない人の競争への関心の違い
性格タイプ | 心の栄養 | 競争への関心 |
---|---|---|
知プラス | 仕事で承認されること | 仕事のやり方、考え方などで自分の有能さを認められたい。結果、競争することへの関心が向く。 |
情プラス | 事を興す、起きること | 競争に関して最もモチベーションが高い。ときにはルールを破ってでも勝にくることもある。最も勝ち負けにこだわる。 |
意プラス | 仕事で承認されること | 仕事に取り組む姿勢、信念によって認められたい。結果、競争することへの関心が向く。 |
知マイナス (HSP) | 一人の時間・空間の確保 | 自分の有能さをアピールしたくない。特に自分が目立ったことで相手の気分を害したくない。結果、競争が得意ではない。 |
情マイナス (HSP) | 人が一人の存在として認められること | 相手の怒りに触れてはいけないため、勝ったことで相手の気分を害したくない。結果、競争が得意ではない。 |
意マイナス (HSS) | 楽しい面白いものに触れること | 負けず嫌いなところがある。しかし、面白い楽しいことでないと持続しない。少し煽ってでも、注目を集めることが得意。 |
特に性格タイプに「プラス」がつくものは、男性に多い傾向があります。
会社はこれら男性性が優位であると言わざるを得ません。
会社では、競争を強いられます。資本主義の原理なので、仕方ありませんよね。
対してHSPは女性に多い性格タイプなので、競争にさらされる環境だと苦戦するかもしれません。
よくHSPは、男女比50:50と言われますけど私は違うと考えています。
結論、HSPじゃない人は条件がそろえば、競争することを好むと言えます。
競争しないと食べていけないんですけど
確かにそうですよね。
日本は資本主義なので収入がないと生きていけません。
HSPは競争に勝たなければならないと、周囲の価値観に流されがちです。
しかし、本当に勝たなくてはいけないのでしょうか。
勝つと「相手を喜ばせよ」、「成功してはいけない」に違反することになります。
禁止令に違反した罪悪感から「自分を責める」きっかけになりやすいです。
どうしても競争しなくてはならない場合は、禁止令に「許可」してください。
何に対して許可するかというと「相手を喜ばせよ」「成功してはいけない」に対してです。
競争しない環境に身を置く
できれば競争しない環境にいることが理想です。
競争すると強いストレスがかかるからです。
あまりに強いと自責の念が強くなり、引きこもりや自傷行為にまで発展することがあります。
したがって競争しない環境が必要となります。
HSPに向く仕事の環境は以下の通りです。
- プライバシーが保証される
- プレッシャーが少ない
- やることが具体的になっている
- 自分に権限が与えられている
- やることに一貫性がある
- 自分のペースで進められる
- 環境変化が少ない
もし会社で、仕事内容を相談できる機会があったなら上記を見直してみてください。
競争することに対して許可する
会社に所属していると、競争せざるを得ない場合があります。
心の安全装置である(拮抗)禁止令を許可してください。
相手を打ち負かすことに抵抗がありますが、仕方ありません。
競争を避けていると、会社で働いている人達から、やる気があるのかと誤解を受けやすいからです。
自分に課したルール(禁止令)をあなたは既に認識しています。
自分に許可して対応してください。
競争が苦手なときの対処法
日常生活なら競争を避ければ問題ありません。
会社で働く人にとっては避けられない場合もあります。
ここでは仕事を選べる場合と仕事を選べない場合に分けて対処法をご紹介します。
仕事を選べる場合
仕事を選べる環境にあるなら以下のスタイルを選んでください。
- 定型的で自己完結型の仕事
- 自分のペースで進められる仕事
定型的で自己完結型の仕事
HSPは自己完結型の仕事の進め方がいいでしょう。
定型的でマニュアルが存在する仕事内容だと不安感なく取り組むことができます。
自己完結型と巻き込み型
仕事の進め方には自己完結型と巻き込み型があります。
スクロールで見にくい場合は、このあとの画像をご覧下さい。
自己完結型と巻き込み型の違い
自己完結型 | 巻き込み型 | |
特徴 | 仕事を個人の裁量、一人で進めることができる。 | チーム全体が協力して仕事を進めることが必要。 |
メリット | タスクが明確に区切られるため、作業の進捗管理が比較的容易。 | チームメンバー同士の連携が取れるため、効率的に業務を進めることができる。 |
デメリット | 責任が一人に集中するため、リスク管理が難しくなる場合がある。 | コミュニケーションの調整や意見の調整が必要となるため、マネジメントが必要。 |
HSPは具体的な指示内容があれば、黙々と作業を進めることができます。
具体的な指示内容は事前に合意しておく必要があります。
合意内容が明確化できれば、
巻き込み型の必須のチームメンバー同士の連携の負荷に比べれば、
ストレスなく進めることができます。
自分のペースで進められる仕事
HSPはマイペースです。
突発的で臨機応変さを求められる仕事に対してはパニックを起こしやすいです。
仕事がスピードを要求されるものだったり、マルチタスクだと頭が混乱しやすいです。
自分のペースで進められる仕事だと、ミスも少なく丁寧にこなすことができます。
しかも器用です。
これまでを総合すると、以下は特別なスキルがいらない職種の例だと言えるでしょう。
HSPが検討したい職種例 |
---|
データ入力(在宅勤務可) |
製造ラインの作業員 |
倉庫内作業(ピッキング・梱包) |
クリーニング作業員 |
警備員(夜間や静かな場所) |
もちろん専門スキルがあれば、上記の職種に限りません。
仕事を選べない場合
禁止令に許可を出してください。
禁止令の安全装置を解除して対処してください。
- 「相手を喜ばせよ」
→「自分を喜ばせよ」 - 「成功してはいけない」
→「成功してもいい」
「目立ってはいけない」
→「目立ってもいい」
①相手を喜ばせようとしない
相手を喜ばせようとしすぎると、
しだいに優柔不断になり相手の意見を優先するようになります。
そうなる前に自分を喜ばせるよう行動します。
例えば、自分が忙しいのに相手を喜ばせようと仕事を引き受けたりしない。
できもしないのに引き受けない。
なぜかというと自分で自分の首を絞めてしまうからです。
とにかく自分を優先するのです。
相手を喜ばせていいのは、余裕がでてきてからです。
②成功してもいい
成功してもいいと、禁止令に対して許可してください。
この際、セットでついてくるのが禁止令「目立ってはいけない」です。
目立ってもいいんだと、自分に許可してください。
例えば、静かなオフィスで電話している話を聞かれたり、会議で自分の意見を率先して言うことに抵抗があるはずです。
目立つことはほんの一瞬で、ほとんどの場合、明日には誰も覚えていません。
意識を自分の内面から、外界へ向ける操作をしてください。
自分に強さを求められている感覚があるはずです。
普段はおとなしいHSPが、スイッチをONにする感覚になります。
「①相手を喜ばせようとしない、②成功してもいい」に共通して言えること
(拮抗)禁止令に触れている状態は、緊張感・プレッシャー状態にあります。
数か月にわたって続くようなら、リラックスする時間、一人になる時間を必ず設けてください。
そうしないと、体調を崩すことになります。
HSPは競争が苦手でもOK
いかがでしたでしょうか。
ここまでをまとめると
- 「相手を喜ばせよ」
- 「成功してはいけない」
が根底にあるから
- HSPの競争が苦手な理由に2つの禁止令がある
- 禁止令は心の健康を保つ安全装置になっている
- 競争しない環境はHSPにとってストレスは少ない
- 日本は競争社会、安全装置を外さなくてはならないときもある
- 禁止令「相手を喜ばせよ」「成功してはいけない」に対して許可をする
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